ソーサリーペドファイル
2013 / PC / 広瀬犬山猫



HTW』をクリアして、ふと作者のツイッターを見ると何やらUstでゲーム制作者同士で対談をやってる、その名も「ニートが世界を救ってみたけど、何か質問ある?」、そこで出会ったのがこのゲーム、対談相手だった。Ustの方でも双方のゲームの裏話や質疑応答、RPGの今昔などなどかなりマニアックな話題が繰り広げられているので、興味のある方はぜひ。



童貞のまま30歳以上になると魔法使いになる、というジョークは古くからネットでは言い伝えられてきているけど、その設定をそのまま持ち込んだのがこのゲーム。RPGらしい王道のファンタジー然とした世界観でありながら、他の有象無象のフリゲRPG群の中でも目を引く設定。そもそもフリーゲームをやる層って、PCを所持しているけどお金はなく、スマホのゲームじゃ満足できないオタク、つまり10代の、ちょっと根暗で友達の少ない、そういう学生が多い気がする(というのは今となっては偏見なんだろうか)のだけど、彼らはすでにデジタルネイティブだろうし、ネットスラングを駆使してSNSに自分の居場所を確立させようとしている、いわゆる非リア。そんなユーザーがいかにも食いつきそうなネタをまず目立たせているのは戦略的に良いと思った。実際ニコニコで実況されているゲームの多くがフリーゲームだし(当然入手やプレイの敷居が低い、キャプチャし易いという理由もあるが)、実況主はリア充に対しては全員口を揃えて「爆発しろ」と言い放つスタンス。『ソサペド』の主人公(デフォルトネームはゆうすけ)は30歳だけど、立ち位置的にプレイヤーはかなり親近感を覚えるはず。



先日紹介した『HTW』も主人公がニートだった。漫画やアニメほどではないにしろ、主人公イコール勇者の文化は衰退しつつある気がする。最初からかっこいいヒーローじゃなくて、どこにでもいるような学生であったり、冴えない平凡なオタクであったり。読者・視聴者・プレイヤーに寄り添った主人公は感情移入しやすく、共感型コンテンツとしてウケやすい。で、このゲームの主人公は30歳無職のロリコンであると同時に歴とした勇者でもある。これは単にいいとこどりしているだけなんじゃなくって、主人公ゆうすけが、プレイヤーとゲームの世界とを繋ぐ媒介としてうまく機能しているという点で、キャラクター像として優れていると言っていい。ラノベ的というか、ギャルゲ的というか、「ニートだし童貞だし幼女大好きだけどある日突然勇者になってしまった」とかタイトルを付けちゃうと語弊があるかもだけど、とにかく世相を反映しつつも、しっかり王道RPGとしてプレイできるゲームになっている。確かにイロモノだし、バカゲーだとも思う、でもそう一口には言い切れない魅力がこのゲームにはある。それを紹介できるといいな。今回はいつにも増してSS、ネタバレ多め。ストーリーそのものに関するバレは極力伏せたつもりだけど、細かいネタを全力で楽しみたい、自力で発見して突っ込みたいという方は注意。ここまで読んで興味を持ったならば是非、公式からゲームをDLして、まず服を脱ぐ落ち着いてプレイするんだ。



ヒロインのリーナちゃんは14歳。この世界では30歳以上の童貞と、15歳未満の処女のみが魔法を使えるという設定。この辺の細かいメカニズムはゲーム中にも語られるし、Ustでも詳しく解説されていたので割愛。上の方ではいきなり真面目に(?)考察しちゃったけど、このコラムは基本的にだらだらと感想を垂れ流すのが方針なので、SSに突っ込みを入れつつ、まあ適当に。



ここでクンカクンカしないやつなんているわけないのに、ひどいよ作者、してやられた。序盤のボスの山賊トリオも飯テロな名前だし。悔しい。



と言いつついきなり掌を反すわけだけど、リーナのおしっこ我慢イベントが最高だった。わかってらっしゃる。ご馳走様です。



ちょいちょい挟んでくるゲームネタも面白い、確かにキャバクラは神室町のしか行ったことないって人は多いだろうね。アユミさんの源氏名、苗字が鳳凰院だったからドクペでも振る舞ってくれるのかと期待してしまった。



リーナの他にも仲間は2人いて、火の勇者ひなたさんはふとももの魅力を活かした体術を操る女性軍人。そして水の勇者オテアライこと御手洗水樹は、魔王城のある山の中腹で自らキャバクラを経営しているイケメンホスト。他の勇者はオタクの主人公とは対照的なキャラクターになっていて、最初はこっちとしても抵抗もあるし、実際に拒絶されたり反発されたりするのだけど、気がつくと頼もしい仲間、なんかイイヤツ的なポジションとしてゆうすけにもプレイヤーにも受け入れられている。魔法は使えないものの、それぞれ固有のコンバットやコール芸を次々覚えていくので戦闘も飽きない。



はいはい土属性土属性、我ら四天王の中でも最弱……と思ってたら初見で雑魚敵に酒浴びせられまくって全滅した。マルカジリされるまでもなかった。戦闘前にもオイヨイヨとか言われてたから完全に舐めてた。



『ソサペド』でいちばん好きなのがこの勇者クイズ。魔王城に突入してひと悶着あった後うろうろしてたら急に始まって爆笑してしまった。これはフリゲームだからできるギリギリのネタかもね。この問題、選択肢にアイギスがいて上手いと思った。T260Gロボブリキ大王と並んでるってのがなんとも感慨深い。『アークザラッド』は辛うじて(動画とかで見たって程度の)知識はあったんだけど、『エストポリス伝記』に至ってはほんとにタイトルしか知らなくって問題見てもさっぱりだったのでググった。たぶん作者も全問一発で正解するようなコアゲーマーは少ないと想定してたのか、検索するための固有名詞が問題文にちゃんと組み込まれてて配慮されてるなと感じた。不正解だった時のヒントメッセージも用意されてて、それが気になって初めからやり直してわざと間違えてみたりもした。『ドラクエ』と『FF』(それも最近の)しかやったことないってプレイヤーも多いんじゃないかな、でもオタクって好きな分野で知らないものがあるとすごく悔しいんだよね。作者は相当なRPGギークみたいだけど、フリゲをプレイするような若い世代にオススメのRPGを紹介するつもりでこのイベント考えたんじゃないかとか思った。だから『エスト』もやってみたい、DS版も出てるみたいだけどできるならオリジナル版がやりたいな。幸い我が家のSFCは現役だし。



はいアウトー。これ読んで気が付いたんだけど、このゲームのタイトル、『ヴァルキリープロファイル』のもじりだよね。どこまでも徹底的だなあ。恐れ入った。



物語の核心に触れる部分でもあるので少しぼやかすけど、この『ソサペド』世界での勇者と魔王の扱いについて知ったとき、心底わくわくした。メタ発言やパロディーって安易にやり過ぎるとチープになっちゃうけど、この場合はバックグラウンドがしっかりしてる所為か全く鼻につかないし、むしろ世界の真理と邂逅してしまったような衝撃があった。作者の愛に嫉妬すると同時に、自分もRPG好きで良かったと思う瞬間でもある。『ブレスオブファイア』や『ポポロクロイス物語』なんかの往年の名作の中にさりげなく最新作(?)の『BDFF』のティズの名前が交じってるのもニクいね。



SS撮りまくりながらプレイしてたので、載せたいものも沢山あるのだけどキリがないしこれ以上は本格的にネタバレになってしまいそうなのでこの辺で。色々と見せられないよ状態。後半は怒涛の展開、想像以上に濃い話だった。シリアス展開でゆうすけが叫ぶ「このクソゲーが」のかっこよさ。突然の炉心融合にはワロタ。それとEDのクレジット、途中で文字がびっしり流れてくる部分があるのだけど、不覚にも涙腺緩んでしまった。ずるい、ずるすぎる。



最初の城の地下にある牢獄がスタッフの開発室になっててセンスを感じる。鍵は後から手に入るから(しかも雑魚敵がドロップする使い捨てアイテムなので、必要数集めたらスルーされがち)、RPG慣れした物好きのために用意されてるオマケとも考えられる。当然隠しボスも存在。RPG愛をとことん詰め込んだ完成度の高いフリーゲームだった。



最初の方に、ゆうすけはプレイヤーとゲームとを繋ぐキャラクターだと書いたけど、この『ソサペド』自体も、スマホで基本無料ゲーをやっているユーザーと、コンシューマゲームとを繋ぐ作品になるかもしれないね。そうだといいな。



ふう。

ソーサリーペドファイル

Posted on

2014年2月6日木曜日

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